こんにちは、兼業投資家すーまん(@2525suman)です。
セミリタイアやFIREをするなら、企業型DCやiDeCo、退職金の受け取り方について考えておきたい。受け取り方次第では、税金を多く払うことも全く払わなくて済むことも可能。そのためには、最低限ルールを理解する必要があります。
企業型DC制度を採用している企業に勤めている方は、セミリタイアやFIREをするとiDeCoに移換する必要があるので、ここではiDeCoと退職金について説明します。
今回は、私の備忘録用にルールの説明、参考事例を使って損をしない受け取り方を考えてみましたので紹介します。
この記事は2021年7月24日時点でのデータをもとに作成しています。
iDeCoと退職金の最低限覚えておきたいルール
セミリタイアやFIREするにあたりiDeCoと退職金について、関係のあるルールは最低限覚えておきたい。
iDeCoと退職金は、一時金や年金として受け取ることができます。iDeCoは併用可能で、退職金は場合によっては併用可能となっています。
ただし、退職金の場合、退職一時金、退職年金どちらの制度を採用しているかは、勤め先によって変わる。

そして、受け取り方法によって適用される控除が2つあり、それらを理解し使い分けることで税金の支払いをゼロにすることもできる。
退職所得控除
1つ目は、一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用。退職所得控除額を超えた部分に対し下記の計算方法で課税退職所得額が決まります。
課税退職所得額の計算式
- (一時金の額-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得額
勤続年数(加入年数) | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
(引用)国税庁 退職金と税
企業型DCからiDeCoに移換すると勤続年数は引き継がれますが、同時に加入していた場合、重複している期間については、カウントされません。そして、iDeCoは運用指図者でいる間、勤続年数にカウントされません。
課税退職所得額をもとに、以下の計算式にて所得税及び復興特別所得税や住民税が源泉徴収されます。
所得税及び復興特別所得税と住民税の計算式
- 課税退職所得額×所得税の税率-控除額=所得税額
- 所得税額×102.1%=所得税及び復興特別所得税額
課税退職所得額 | 所得税の税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 427,500円 |
40,000,000円以上 | 45% | 427,500円 |
(引用)国税庁 退職金と税
- 課税退職所得額×10%=住民税額
例えば、勤続年数30年で退職一時金を2,500万円受け取った場合、手取りは23,915,478円となる。
退職一時金の手取り参考例
- 退職所得控除 800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
- 課税退職所得金額 2,500万円-1,500万円×1/2=500万円
- 所得税及び復興特別所得税額 (500万円×20%-427,500円)×102.1%=584,522円
- 住民税 500万円×10%=50万円
- 手取り 2,500万円-584,522円-50万円=23,915,478円

退職所得控除の注意点として退職金を一時金で受け取るとiDeCoで一時金を受け取る場合、15年経たないとフルに退職所得控除が適用されません。

ただし、退職所得控除額が使いきれない部分についてはiDeCoに使うことができます。そのために、下記の計算式で勤続年数何年分の退職所得控除額を使ったのか?みなし勤続年数を計算する必要があります。
みなし勤続年数計算式
前回の退職手当等の収入金額 | みなし勤続年数 |
800万円以下の場合 | 退職金÷40万円 |
800万円を超える場合 | (退職金-800)÷70万円+20年 |
(引用)国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
例えば、年齢50歳で勤続年数30年。退職一時金を1,000万円受け取った場合、みなし勤続年数は22年(1年未満は切り捨て)となる。ここから、iDeCoの重複期間を引くと使える加入年数がわかる。
もし、20歳から企業型DC、50歳から60歳までiDeCoに加入していたとすると、60歳時点で720万円分の退職所得控除が使えます。

公的年金控除
2つ目は、年金として受け取る場合は公的年金控除が適用される。下記の表から公的年金等に係る雑所得の金額を算出する。
公的年金等に係る雑所得の計算式
- 公的年金等の収入金額の合計額×割合-控除額=公的年金等に係る雑所得の金額
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下 | |||
年金を受け取る人の年齢 | 公的年金等の収入金額の合計額 | 割合 | 控除額 |
65歳未満 | 公的年金等の収入金額等の合計額が600,000円以下の場合、所得金額はゼロになります。 | ||
600,001円から1,299,999円まで | 100% | 600,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 | |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 | |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 | |
65歳以上 | 公的年金等の収入金額等の合計額が1,100,000円以下の場合、所得金額はゼロになります。 | ||
1,100,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 | |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 | |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
(引用)国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
さらに、総所得金額から差し引くことができる控除の1つに基礎控除があり、合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円の控除が受けられるというもの。
年金として受け取る場合の欠点として、雑所得は総合課税であること。他に総合課税の所得があると所得税が高くなるので注意が必要です。

受け取り方法について楽天証券の場合、受け取り期間は5年以上20年以下の期間から、1年刻みで選択可能。年間支給回数も下記の6種類から選択することができます。
年間支給回数 | 支給月 |
年1回 | 12月 |
年2回 | 6月、12月 |
年3回 | 4月、8月、12月 |
年4回 | 3月、6月、9月、12月 |
年6回 | 偶数月 |
年12回 | 毎月 |
年金の受け取り開始5年経過後であれば、年金資産額の残りを全額一時金として受け取ることができる。

その他の覚えておきたいルール
その他に、覚えておきたいルールを2つ紹介します。
その他のルール
- 現在iDeCoの受け取り開始時期は、70歳まで繰り下げることができる
- 勤続年数(加入年数)は、1日でも超えていると1年として計算される
1.iDeCoの受け取り開始を、70歳まで繰り下げるメリットとして運用期間が長くなること。法改正によって、2022年5月からiDeCoの加入年齢が65歳まで拡大。この間も掛金を拠出すればも加入年数にカウントされる。それに伴い、繰り下げも75歳まで延長可能。
2.勤続年数(加入年数)は、1日でも超えていると1年として計算される。例えば、勤続年数が10年2ヶ月とすると11年と計算されます。このルールをうまく使って退職時期を調整すれば、退職所得控除額を増やすことも可能。
私の損をしない受け取り方を考える
私の下記の条件をもとに、損をしない受け取り方を考えてみました。
年齢 | 今年42歳 |
入社日 | 2004年10月1日 |
退職予定日 | 2029年12月31日(25年3ヶ月) |
退職金制度 | 今年12月から復活 |
企業型DC(iDeCo)加入予定期間 | 2004年10月から2039年12月31日(35年3ヶ月) |
掛金 | 月1.4万円 |
50歳になる年の12月31日に退職して、セミリタイア予定。就業規則が更新されていないため、詳しい退職金の額は不明ですが8年分ということで、中小企業に勤める高卒10年目の退職金の相場を調べると約90万円でした。



現在、企業型DCの資産は約780万円。退職後iDeCoに移換し掛金も1.4万円を維持。利回り5%で運用すると、60歳時点で約2,360万円になる予想です。

退職金とiDeCoの金額がわかったところで、両方一時金で受け取る場合と退職一時金とiDeCoは併用という組み合わせで比べてみます。
一時金のみで受け取った場合
退職金
- 退職所得控除 800万円+70万円×(26年-20年)=1,220万円
- 課税退職所得金額 70万円-1,220万円×1/2=0万円
- 手取り 70万円-0万円=70万円
みなし勤続年数
- みなし勤続年数 70万円÷40万円=1年(1.75年)
iDeCo
- 退職所得控除 800万円+70万円×(36年-1年-20年)=1,850万円
- 課税退職所得金額 2,360万円-1,850万円×1/2=255万円
- 所得税及び復興特別所得税額 (255万円×5%)×102.1%=130,177円
- 住民税 255万円×10%=25.5万円
- 手取り 2,360万円-130,177円-25.5万円=23,214,823円
両方一時金で受け取った場合、税金は23万円程度で手取り約2,320万円という結果になりました。次に、退職一時金とiDeCoは併用した場合は、どうでしょうか?
一時金と併用
退職金
- 退職所得控除 800万円+70万円×(26年-20年)=1,220万円
- 課税退職所得金額 70万円-1,220万円×1/2=0万円
- 手取り 70万円-0万円=70万円
みなし勤続年数
- みなし勤続年数 70万円÷40万円=1年(1.75年)
iDeCo
退職所得控除できる分だけ一時金として受け取り、残りを5年間の年1回の年金で受け取る
- 退職所得控除 800万円+70万円×(36年-1年-20年)=1,850万円
- 年金受け取り 2,360万円-1,850万円=510万円
- 手取り 1,850万円
- 公的年金雑所得 510万円÷10年-60万円=0円
- 年金手取り 510万円
一時金と年金を併用すれば、雑所得の額次第で税金0も可能で、手取り約2,360万円という結果でした。10年分のiDeCoに係る手数料を考えても後者の方が、お得ということがわかりました。

まとめ
この記事をまとめるとこんな感じになる。
この記事のまとめ
- iDeCoと退職金のルールは最低限覚えておこう
- 一時金、年金、併用と3つの受け取り方法がある
- 受け取り方次第で、税金0も可能でした
- 将来、退職金とiDeCoの手取りは2,360万円でした
今回、将来に向けて退職金とiDeCoの損をしない受け取り方について紹介しました。何も考えず、一時金として受け取ると損をすることもあるわけです。
退職金やiDeCoの受け取りは、まだ先のことであり金額の増減があると思います。その時は、iDeCoの加入期間を延長する。年金の受け取り期間で調整するなど工夫して、税金を0としたいですね。
